にも書ける!声人語  〜略して君天〜 番外編

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朝日新聞

【社説】2005年10月26日(水曜日)付

ハンセン病判決 旧植民地も補償は当然だ


産経新聞

【主張(社説)】2005年10月26日(水曜日)付

ハンセン病訴訟 救済実現に政治の判断


 日本が戦前、植民地支配していた朝鮮半島と台湾でハンセン病療養所に入れられた人たちも、ハンセン病補償法で補償すべきかどうか。同じ日に東京地裁で出た二つの判決で、結論が分かれた。

 日本国内の入所者と同じように償うのが法の趣旨にかなう、というのが民事38部だった。民事3部は「国会では旧植民地への補償は議論されなかった」として、訴えを退けた。

 台湾と韓国のハンセン病療養所の入所者百四十二人がハンセン病補償法に基づく補償を求めていた裁判で二つの異なる判決が出た。韓国訴訟と台湾訴訟は別々の裁判なので、ありうる結果ではあるが、同じ東京地裁で、しかも、わずか三十分の間に、ほぼ百八十度異なる判断が示されたことには釈然としないものが残る。

 同じように強制的に収容したのであれば、どこであろうとも、分け隔てなく公平に償うことが当然である。私たちは民事38部の考え方を支持する。

 訴えていたのは、韓国の国立小鹿島(ソロクト)病院の117人と、台湾の楽生療養院に住む25人だ。植民地時代に入所させられ、今もそこで暮らしている。日本で01年に補償法ができたあと、厚生労働省に補償を求めたが、棄却された。東京地裁に訴え、別々の部で審理されていた。

 この裁判は、日本統治下の戦前、韓国と台湾で作られたハンセン病療養施設がハンセン病補償法に定める「国立ハンセン病療養所」なのかどうかが争点だった。現地総督府の法令が設立根拠だった韓国の小鹿島(ソロクト)更生園と台湾の楽生院は、日本の国立療養所には該当しないというのが厚生労働省の考え方であるからだ。

 台湾の入所者を審理した民事38部は「偏見や差別と隔離政策により患者が強いられてきた苦難を真摯(しんし)に受け止め、入所時期や国籍の制限なく網羅的に補償をするのが立法趣旨だ。台湾の入所者を除外する合理性はない」と述べた。

 一方、韓国の原告を担当した民事3部は「法制定の国会審議で、旧植民地の入所者を補償の対象にするとの議論はなかった」と述べた。当時、旧植民地の療養所への認識がほとんどなかったのだ。

 ハンセン病補償法は「らい予防法」に基づく強制隔離政策を誤りと認めた平成十三年の熊本地裁判決を受け、議員立法で作られた。法案の審議過程で韓国と台湾の療養所の状況が把握できず、国外の患者への扱いが法律に明記されなかったために、厚労省は小鹿島更生園と楽生院の入所者は除外されるとして補償請求を棄却していた。

 植民地統治下の療養所の実態を知るほどに、公平な償いが必要だという思いが強まる。

 厚労省が設置した第三者機関「ハンセン病問題検証会議」が今年3月、厚労相に提出した最終報告書は、朝鮮半島でのハンセン病の入所者について、「日本国内の患者が受けたと同様の人権侵害だけでなく、植民地民族への差別による二重の人権侵害を受けた」と述べた。

 この請求棄却を違法として入所者らが起こした今回の裁判で、台湾訴訟の判決は補償法を「広く網羅的に施設入所者を救済しようとする特別な立法」として原告の請求を認めた。韓国訴訟の判決は請求を棄却したが、それでも入所者が「差別と偏見」にさらされてきたことには「原因の一端が戦前の日本の隔離政策にあったことは否定しがたい」と言及している。

 強制的な収容と隔離、断種・堕胎、厳しい作業、監禁の脅しなどは、日本国内の療養所と共通する問題だったが、それだけではなかった。小鹿島では、各集落の詰め所にムチが備えられていた。クリスチャンだったため神社参拝を拒むと、気を失うまで殴られ、懲罰として断種された、という人もいる。

 台湾でも、入所者は同じような状況に置かれていた。

 日本によって、耐え難い苦痛を被った人たちである。せめて平等な補償を受けるのは、当然のことだろう。

 四年前の熊本地裁の判決の後、就任間もない小泉純一郎首相は控訴断念を決断し、補償法が生まれた。被害者の救済を急ぐあまり、その補償法の条文にあいまいさを残したことが今回の訴訟につながったともいえる。

たしかに、裁判所の判断は分かれた。しかし、訴えを退けた民事3部も「旧植民地の療養所を補償対象から除外するのが法の趣旨とまでは断定できない」とも述べている。

 正反対の二つの判決がほぼ同時に出された以上、控訴して争う道はもちろんあるが、原告はすでに平均年齢八十二歳という高齢である。控訴審を待っていたのでは救済の機会すら失われてしまう。

 原告の多くはすでに80歳に達している。政府はこれ以上裁判所で争うことなく、旧植民地の人たちに早急に補償すべきだ。法を改正するまでもなく、厚労省の告示を変え、補償対象に旧植民地の療養所を追加すれば済むことである。

 そもそも判決が二つに分かれたこと自体、手続き論ではなかなか結論が出せないことを示している。ここは政治の判断を明確に打ち出し、救済への道を開く場面なのではないか。


 ほとんどの文において、アカ字部分を省いても別段問題なく意味が通じるのはなぜだろう???マス目を埋めるための字数稼ぎなのか?

【評】さすが朝日新聞。余裕を感じマスわ


 余計な単語がつけ加えられていないので、記事の真意が伝わりやすい。簡潔な表現は紙面の無駄を省き環境にやさしい。文章の基本

【評】 韓国と台湾。これで十分。

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