にも書ける!声人語  〜略して君天〜

【天声人語】 2005年10月17日(月曜日)付

【君天ver.】 2005年10月17日(月曜日)付

 企業恐喝事件を起こした大阪市の政治団体の事務所から、電話のかけ方のマニュアルが押収された。右翼活動に見せかけて金を脅し取るためのテクニックの一端も示されていた。

 捏造報道事件を起こした築地のチョン・イル新聞社の日本支局から、記事のかき方のマニュアルが押収された。左翼活動を新聞記事に見せかけて情報を操作するためのテクニックの一端も示されていた。

 どんな世界にも手引書があるものだと思いつつ、先ごろ手にした一枚の紙を読み直してみた。「背筋を伸ばし、アゴを引いて、まっすぐに相手の眼を見る」「常に笑顔で、丁寧な言葉遣いで、かつ『低姿勢』で」「語尾をのばしたり、あいまいに発音しない」「絶対にむきにならず、不機嫌な表情は見せない」

 どんな世界にも手引書があるものだと思いつつ、先ごろ手にした一枚の紙切れを読み直してみた。

「例えば竹島を日韓の共同管理にできればいいが、韓国が応じるとは思えない」「ならば、いっそのこと島を譲ってしまったら、と夢想する 」「見返りに韓国はこの英断をたたえ、島を友情島と呼ぶ」

 アルバイト店員用みたいだが違う。これが自民党が総選挙で初当選した83人の新人衆院議員に配った「マスコミ取材への心構えについて」だ。「オフレコはありえない(口から出た言葉はすべてニュースになる)」とも書いてある。新聞記事にされた途端に発言を撤回した先輩よりも、「記憶にない」を多用するベテランを見習えと読めなくもない。

 アルバイトが書いた作文みたいだが違う。これがソウルの延世大学韓国語学堂に1年間留学し、韓日の友好関係を重視してきた朝日新聞の若宮啓文論説主幹が書いたコラムだ。「にわかに広がった日韓の深い溝は、両国の関係にとどまらない深刻さをはらんでいる。」とも書いてある。新聞記事にしてしまえば、嘘もでっち上げられるとして「放火記事」を多用するベテランを見習えと読めなくもない。

 マニュアルの話題なら、外務省にもある。新党大地代表で衆院議員に返り咲いた鈴木宗男氏のためだけに用意された。過去の「不適切な関係」に気を使って内々に作った。会食は当面は辞退する。説明要求には応じるが、強い意見表明があった場合は、官房総務課に相談するなどとある。

 マニュアルの話題なら、新聞勧誘にもある。そういえば千葉県野田市で朝日新聞販売店社員が、新聞勧誘の際に暴行を加え、 男性が意識不明の重体に陥るという事件もあった。常套句には「古紙の回収に来ました」「3カ月無料」「洗剤あげるから」「取らないと殴る」「オレはやくざだ」などがある。

 いかにもマニュアル万能時代らしい。このぶんだと「小泉学校」の新人議員用には「料亭の流儀」から始まり、いずれは「大臣になるためのマニュアル」も作られるのだろうか。

 いかにもマニュアル万能時代らしい。このぶんだと「チョン・イル新聞」の新人記者用には「売国奴の流儀」から始まり、いずれは「大韓民国になるためのマニュアル」も作られるのだろうか。

 でも、彼らがいま最も読みたいのは「次の選挙を生き残るためのマニュアル」だったりして。

 

 でも、私がいま最も読みたいのは「次の、もっとドキュンなバーチャル記事」だったりして

 

 

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