太陽系の惑星として長年親しまれてきた冥王星が惑星から除外された。自然への興味を示さない子供が増えているが、この変更を教材として自然や広大な宇宙に思いをめぐらす好機としたい。
チェコの首都プラハで開かれた第二十六回国際天文学連合(IAU)の総会は、太陽系惑星の定義を(1)太陽の周囲を回る(2)質量が大きく自分の重力でほぼ球形(3)軌道上で圧倒的に大きい−の各条件を満たしている天体、と決めた。
この条件を冥王星に当てはめると、冥王星は海王星と軌道が一部重なり、しかも海王星よりはるかに小さい。従って、(3)の条件を満たしていないことになる。
このため、太陽の周りを回っているものの、小さく、軌道の近くに同じような天体が存在する「矮(わい)惑星」のジャンルに入れることになった。
冥王星は一九三〇年、米国の天文学者によって発見され、以来、七十六年間、太陽から最も遠い軌道を回る惑星として親しまれてきた。
日本でも、太陽から近い順に「水金地火木土天海冥」(スイキンチカモクドテンカイメイ)の語呂が、あまねく知れ渡っているほどである。除外に寂しさを訴える声があることも、感情的には理解できる。
昨今の日本の子供たちは、宇宙の神秘にあまり興味を示さない。データを示そう。
国立天文台の縣(あがた)秀彦助教授らの調査によると、「太陽が地球の周りを回っている」と考える小学生は高学年でも四割。「太陽は西の方角に沈む」と正しく答えられなかった児童は約三割。これでは、人間の力の及ばない宇宙の神秘に、畏敬(いけい)の念を抱け、といわれても抱きようがないだろう。
冥王星が太陽系の惑星から除外されたことにより、世界中の教科書が一斉に塗り替わる。文部科学省によると、日本では惑星について学ぶのは「理科第二分野」で、中学三年のときである。
教育現場では、世界中で話題となったこの変更を、宇宙に興味を持たせる絶好の機会ととらえてほしい。
それには除外された理由を丁寧に説明してみてはどうか。太陽と地球、そして各惑星との位置関係や軌道などを、コンピューターグラフィックなども交えて分かりやすく教える。そうすれば、宇宙に興味を示す生徒も増えてこよう。「水金地…」の語呂から「冥」を省けばそれでこと足りる、というような教え方は論外である。
これから秋を迎えると、夜空が澄んでくる。星を眺めて、宇宙に思いをめぐらせてみようではないか。
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