全国紙5紙の社説読み比べ(2)
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毎日新聞
【社説】2005年10月26日(水曜日)付
台韓のハンセン病 国会の責任で全面救済急げ
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読売新聞
【社説】2005年10月26日(水曜日)付
ハンセン病救済 国会は立法趣旨を明確にせよ
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感染する恐れがないのに強制収容隔離した国のハンセン病政策は取り返しのつかない過ちだった。元患者らが国家賠償を請求した裁判で熊本地裁が01年に原告勝訴の判決を下した後、政府は過ちを認め、元患者らに謝罪した。不作為を批判された国会も与野党を挙げて救済に乗り出し、約1カ月間でハンセン病補償法を制定した。振り返れば、遅きに失したとはいえ、画期的な対応と評価すべき点は少なくない。
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同じ東京地裁で同じ日に、正反対の判決が出た。何とも分かりにくい。
戦前から韓国と台湾にあったハンセン病療養所の元患者らが「ハンセン病補償法」の適用を求めて、東京地裁にそれぞれ起こしていた裁判である。
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同法は患者、元患者を幅広く救済するため、国立療養所などに収容された者なら時期、期間などを問わず、救済対象とした。賠償の対象を限定せざるを得ない司法判断の壁を、立法府が超越させた点でも画期的だった。その結果、らい予防法の直接の被害を受けなかった旧琉球政府時代の沖縄県の療養所の入所者も、私立療養所の入所者も、本土の国立療養所の入所者と変わりなく救済されている。
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基本的な争点はまったく同じだ。だが韓国訴訟では元患者の請求を棄却し、台湾訴訟では訴えを認めた。
もちろん、審理する裁判官が違うのだから、異なる判決はありうる。
しかし、今回の二つの裁判で判決が食い違ったのは、ハンセン病補償法そのものに問題があるからではないか。
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ところが、日本の植民地下に設立された韓国の小鹿島慈恵医院と台湾の楽生院という二つの療養所の入所者の補償請求は、厚生労働省に拒まれた。同法が対象療養所名を列記した同省の告示に両療養所が含まれていないせいだ。国会で同法を制定する際、戦争中の実態はよく分からない、と深い論議をせず扱いを後回しにした影響である。戦後補償などを勘案して旧植民地の被害者を補償の対象外とするなら、53年施行の「らい予防法」を境に対象を絞ることもできたのに、それをしなかった以上、救済する意思はあったはずだ。
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ハンセン病補償法は、2001年の熊本地裁判決を契機に作られた。熊本判決は、遅くとも1960年には違憲性が明白になっていた「らい予防法」を存続させた国会の不作為を批判し、隔離政策によってハンセン病の元患者が受けた苦難を「人生被害」とした。
判決を受けて国会は、60年以前の隔離被害も含めて補償する法律を、議員立法で定めたのである。
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両療養所の入所者たちが厚労省の処分の取り消しを求めた訴訟の判決は、同じ日に東京地裁で言い渡されたのに、台湾側勝訴、韓国側敗訴と明暗を分けた。裁判部が異なるから判断が違うのは仕方がないが、法解釈を前提とする司法の限界かもしれない。元はと言えば、国会が同法制定を急ぐあまり、両療養所の扱いを明文化しなかった不手際に起因する。
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しかし、戦前に日本統治下にあった地域で隔離された人たちを、補償対象に含めるかどうかは、ほとんど議論されず、法律でも明確にされていない。
厚生労働省は告示で、対象を国内施設で隔離された人に限定している。
その結果、たとえば韓国人の元患者でも、たまたま国内施設に隔離された人は補償対象となり、一方で現在の韓国南部の施設に隔離された人は対象外、となっている。
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両療養所の入所者らは植民地の住民として二重、三重の差別を受け、国内の元患者にも増して辛酸をなめた。国内では結婚の条件とされた断種も、植民地では懲罰として行われた。小鹿島は軍需工場化され、入所者は不自由な体でレンガやカマスなど軍需物資生産の強制労働に駆り出された。神社への参拝だけでなく、園長の銅像にまで拝礼を強いられもした。日本本土で同時に強制収容されながら、一部が小鹿島に移送されたケースもあり、戦後の待遇に不平等が生じてもいる。両療養所でも国内同様の強制隔離政策がとられたことは、同省が設置したハンセン病検証会議の報告でも明らかだ。
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立法過程では旧統治下の療養所の実態調査も行われていない。韓国訴訟の判決が、法律は外地療養所入所者への補償を想定していない、というのは、そうした国会審議の中身を踏まえてのことだろう。しかし台湾判決の言うように、国内に限定するという規定もない。
立法過程を厳格に見れば韓国判決になる。法律が意図する救済の精神を重視すれば台湾判決になる。
これはもう、司法判断にゆだねるべき問題ではない。
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私たちは4年前、ハンセン病政策について深く反省し、被害者は無条件で一括救済しようと決めたのだ。法に不備がある以上、さらなる司法判断を待つまでもなく、国会で法改正を急ぎ、植民地時代の被害者も救済すべきである。
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立法の趣旨に従えば、補償対象は国内施設の元患者に限定するのではなく、旧統治下の入所者まで広く救済することが望ましい。衆参両院で改めて議論し、必要ならば法改正や決議などによって救済の対象を明確にすべきだろう。
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アジアの人々との友好親善にも資するところは大きい。26日の党首討論でも取り上げ、早速、超党派で取り組むべきではないか。
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ハンセン病補償法は2006年6月までの時限立法だ。原告の元患者は平均81・6歳と高齢である。時間は少ない。このままでは、国会は再び「不作為」を問われよう。
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