国際天文学連合が太陽系の惑星を新たに定義し、冥王星を惑星から外して「矮(わい)惑星」と呼ぶ新たな天体の分類に入れることを決めた。当初は惑星の数を現在の9つから12に増やす案が提案されたが、議論の末、逆に冥王星を外して8つに減らした。議論の二転三転への疑問、「常識」が変わることへの戸惑いがあるにせよ、新たな知見に基づいて熱心に議論し、科学的合理性の観点から思い切った結論を出した天文学者に敬意を表したい。
冥王星は月よりも小さく、軌道面はほかの惑星とは異なっている。軌道自体も海王星より内側に入り込むことがあり、ほかの惑星と同列に扱うには無理もあった。しかも観測技術の進展で冥王星近くにカロンなど太陽系を回る新たな天体が見つかり、定義によっては惑星の数が急増するとみられていた。だから惑星を定義する必要性に迫られていたわけで、長年の惑星論争の決着は科学史に残る出来事といえる。
冥王星をはじめ、カロンや海王星以遠の新天体は米国で発見された。米国人には冥王星に対する愛着もあっただろうし、新たに発見した天体の格上げの願望もあっただろう。愛着や思惑を振り切り、科学的合理性という観点だけから出した結論は明快であり、説得力もある。
惑星は学校の教科書に出てくるし、ほとんどの人は「水金地火木土天海冥」とそらんじ、慣れ親しんできた。その「常識」が天文学者の多数決で変わることに意外感、違和感があるにしても、結論は分かりにくいわけではない。一連の議論が広く伝えられて惑星の理解も深まり、天文への関心も高まった。
太陽系には惑星や新たに定義された矮惑星のほかに、彗星(すいせい)もあるし、火星と木星の間に4万以上の小惑星、海王星の外側に膨大な数の天体がある。探査は進められており、冥王星も9年後に米国の探査機が到着すれば新たな知見が得られるだろう。教科書の書き換えは大変だろうが、新たな知見で教科書が次々と書き換えられるのは見方によっては楽しい。科学技術が急速に進展しているのだから、これを契機に理科の教科書は天文以外の分野でももっと頻繁に書き換えたらいい。
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