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天文台官舎新妻日記
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天文台官舎新妻日記 |
大正時代に麻布から三鷹に移転してきた東京天文台。天文台にはいまでも当時の貴重な建造物が残っている。 官舎も当時のものが残っている。天文台の官舎はどれも築80年〜50年の小さな木造平屋の一戸建て。とりわけ大正時代の官舎は当時の文化が見えておもしろい。 たとえば、玄関わきにある3畳ほどのちいさな部屋。 ここは、かつて天文学者を志す学生が暮らしていた書生部屋(死語!)だったらしい。女中部屋(死語!)とおぼしき間取りが残っている家もある。こうした官舎には当時の高官(えらい人!)が住んでいたそうだ。たしかに古い官舎は、床や天井が高く、柱も太い。 古民家ってこんな感じなのかなぁ。80年もの間、風雪に耐え、戦火に耐え、関東大震災も耐え抜いたのか?そう考えると恐れ多くて、とてもボロだなんて言えないわ。
とにかく古い建物だから、接着剤ベタベタの合板材なんか使っていない。したがって「シックハウス症候群」など無縁。健康にはよろしいかと思われます。
私たちが入居した官舎は昭和25年に建てられたもの。築50年というのは、ここの中では比較的新しい。 建てられたのが、ちょうど終戦後の物資が乏しい時期という時代背景を反映してか、柱は細く、床もそれほど高くはない。家自体もどこかこじんまりとした印象だ。 間取りは6畳、4畳半、4畳半と廊下。今風に言えば3Kといったところだろうか。
天井には雨漏り痕の「しみ」 があり、
どんなに掃除をしても、天井裏に分厚くつもっているであろう50年分のホコリは容赦なく降りそそいでくる。大雨が降れば雨漏りすることがあるのでバケツは必需品。風呂場の壁の中にはアリが巣をつくっていて、湯をいれるとたちまちアリの行列が姿をあらわす。時にはダンゴムシやゲジゲジ、体長10センチはある大きなムカデまでがお目見えすることもあり、入居したてのころ虫ぎらいの私は、しょっちゅう風呂場で悲鳴をあげていた。夏場は、ほんの1秒玄関を開けただけでも蚊が入ってくるので、虫よけスプレーとムヒ(薬の名前)と蚊取りマットが欠かせない。冬はというと「すきま風」が入るので、どんなにストーブをたいても一酸化炭素中毒になる心配はない。 とまあ、ここに住んでいるとまるで昭和30年代にタイムスリップしたような感覚になる。
こうした適度の不自由さも慣れればかえって心地よい。むしろここには不便さを風流へと昇華させてしまう不思議な魅力がある。 じつは、天文台には遮光領域といって、外からの明かりを遮断する雑木林があり、おかげで東京とは思えない原始的な自然が残っている。まずはこの素晴らしい自然環境が官舎暮らし最大の魅力だ。たとえば、
ウチの庭にはキジの親子がやってくる。
はじめて野生のキジを見た場所が、東京都三鷹市の家の庭先というのも、なかなかオツな経験だ。田舎の山で暮らすキジにくらべたら限られた生活圏だろうけど、ここはキジが生きていかれる環境なんだなあ。感動。 餌付けはしない。もちろん、キジ丼にして食べちゃおう!なんて気持ちはこれっぽっちもない。ただ、せっかくウチに来てくれるのだから、ゆっくりしていって欲しい。私を見ても逃げない程度に仲良くなりたいのだ。キジは意外と神経質で、私が家の中で動いただけでも気配を察して去っていってしまう。ちょっとさみしい。
ある朝のこと。 郵便受けへ新聞をとりにいこうと玄関をあけたら、なんと玄関前で親キジが朝食の真っ最中。私はキジと目が合ってしまった。こういうときって、どちらともなく身体の動きが止まるのね。キジと私は硬直状態で向き合ったまま、ビデオを一時停止したような場面が数秒経過した。 (おはよう) ふいに私はキジにほほ笑みかけてみた。天使のように。それなのにキジの奴、タタタタターッと地面を走って、一目散に逃げていってしまった。 ひどいなあ。いくら寝起きだったとはいえ、私のスッピン顔はそんなにも怖かったのだろうか?
夜、家の明かりをつけると台所の窓にヤモリが集まってくる。最初のうちは、あの爬虫類独特の姿形に戸惑ったが、慣れるとカワイイ 足の指下板(吸盤のような働きをする)と白い腹をペッタリ押しつけて、いつでも同じ窓にへばりついている。ときどき舌を出しながら、ちょろちょろと移動する。 いつも決まって4匹集まってくるので、おそらくわが家を縄張りにしている仲間たちなのだろう。害虫を食べてくれて家を守ってくれるありがたい生き物といわれているが、同じ家に集う同士、こう毎日お目にかかっていると次第に情が移らずにいられない。
夕食の用意がととのって、 「いただきまーす。」 と窓を見上げると、ちょうどタイミングよくヤモリが蛾を捕らえる場面だったりする。 餌となった蛾は、断末魔の悲鳴のごとくブーンブーンとにぶい音をたてて羽をばたつかせ、じたばた抵抗しながらも、じわじわとヤモリの大きなクチに飲み込まれ、そのうち蛾の動きは止まり、ヤモリの白い腹がぷっくりと膨らんでいくというグロテスクな光景を、よりによって食事時にながめる羽目になったとしても、 「あ、あちらもちょうどお食事ね。」 なんて言いながら、パクパク、夕食をいただいている。
さて、官舎での新婚生活がスタートしたものの、家屋にはいくつか気掛かりな点があった。まず気になったのは玄関の柱。なんと柱の下の部分がない。木が腐ってしまったようだ。つまり屋根から柱が宙づり状態なのである。これでは物理的に柱の役目を果たしていないばかりか、多大なすきま風と砂ぼこりが入ってくる。 廊下の外壁はシロアリに食い荒らされて木がスカスカ。板がはがれ落ちてしまうほどの深刻なシロアリ被害にあっていた。廊下を歩くと、ところどころグニャリと床がへこむ。気をつけないと床が抜けそうで、廊下を歩くたびに冷や汗をかくのも疲れたので、担当部署へ修理の申請を行った。が、却下された。 「実際にシロアリを目撃したのですか。」 憶測ではなく証拠が必要ということらしい。つまり申請者が実際にシロアリを目撃していなければ、ダメなんだそうな。キビシ〜っ!よってその冬は体重のかけかたに気をつけながらソロリソロリと廊下を歩いた。
春になって、家の中で羽アリがとんでいるのを発見。(ふつうのアリと比べると羽の生え方がちがうのだ)...あまり見たくない光景である。 おそるおそる外壁の板をつまんでみると、いとも簡単にボロッととれてしまい、その板の裏側には... ぐえーーーー!いたーっ!真っ白い×××ちっちゃな×××が××××!!!うううう、この光景は書けない書きたくないっ!!!! 即、担当部署に報告。 迅速にシロアリ駆除をしていただいた。
シロアリ駆除につづいて、外壁と廊下、宙づりの柱も修繕をしていただくことになった。廊下は全部張り替え、茶の間の横木も侵食されていて要取り替え。かくして全治一週間の大修理となったのである。
さて、宙づりだった玄関の柱だが、いったいどうやって直すのかと思っていたら、寸法を図って木を細工し、下の部分だけをピッタリはめ込んで見事に柱を接いでしまった。
「腕がいいんですねぇ。」 と感心していたら、 「てやんでい、腕がよくなきゃ、ここの仕事はできねぇやい。」 みたいなことを、おっしゃっていた。
ところで、公務員の方にはおなじみの表現と思われるが、 修理 ⇒ 壊れる前より良い状態にすること 修繕 ⇒ 壊れたものを元どおりに直すこと と明確に区別されている。
言うまでもないが、国立天文台は国の機関である。 原則的に国のものは現状維持が基本だ。壊れたものを元どおりに直す「修繕」によって現状を維持するのである。 本当は柱一本を丸々とりかえたほうが楽なんだそうな。ところが、あくまでも「修繕」なので腐った部分以外に手を加えることはできない。柱を丸々一本取り換えるというのは、修繕の定義に反するのだ。
大風などで瓦がとんだ場合はさらに大変だという。ウチの官舎で使われている瓦は、あまりにも古すぎて鋳型がないらしい。通常ならば屋根瓦を全部新しいものに取り換えることになるのだが、修繕の場合は、瓦が5枚とんだとしたら、5枚分の材料費しか出ないことになる。そこで職人さんは、新しい瓦を削ったりして手作りで対応するんだとか。いやはや大切な国家予算(=皆さまの血税)で住まわせていただいておりますゆえ、ぜいたくは申しませぬ。
ちなみにシロアリ被害で床下の木が全滅していた廊下は全取替(=修理)をしていただき、おかげさまで見違えるほどキレイに生まれ変わった。はがれた外壁の板はというと、修繕した部分に「とのこ」を塗って、官舎独特の昭和30年代的な風合い(=現状と同じ)が見事によみがえった。
なるほど。50年以上も当時の姿を維持しながら人が住みつづけてこられたのは、お役所の掟のおかげであり、こうした職人さんたちの知恵と技術のおかげだったのだ。
だから官舎の仕事は職人冥利につきるとか。 それがどんなに難しい注文でも、たとえ予算が厳しくても、 「てやんでぃ、やってやろーじゃねーか。」 てな感じで大工魂を燃やすのだ。
いよっ!名大工さん!
(step 1) 庭にハーブの種をまいた。 食事のとき、摘みたてのハーブが食べられるなんて、ちょっと素敵じゃない? 日当たり抜群で玄関に一番近い一角を私のなわばりと決めた。レンガで囲いをして、草を抜いて、シャベルで土を掘り起こして、大切に大切に、種をまいた。 セージ、パセリ、レモングラス、バジル、三つ葉、青じそ。それぞれ札を立てて、ここは私のハーブガーデン。
(step 2) 早く芽よでておいで って毎朝お水をあげてたら、わーい。たくさん芽がでてきたぞ! んっ!こんなところに種まいたっけ?まってよ。これ、いったいどれがハーブでどれが雑草なの?仕方ない。見分けがつくまでしばらく放っておこう。
(step 3) どうにかこうにか見分けがつくようになったので、食べられそうにない草を間引きした。 まいた覚えのないセリが、すごい勢いで生えている。自然に生えてきたようだ。ま、いいか。食べられるんだから残しておこう。と思っていたら、次に生えてきたのは赤ジソ。なんで?鳥のふんに運ばれてきたのかなあ。いいや。食べられるんだし。ラッキー、ラッキー。
(step 4) 結局ハーブの芽は出なかった。収穫できたのは自然に生えてきたセリと赤ジソ。かろうじて育った青ジソは収穫しようとしたら、無残にも虫に食われて葉脈だけになっていた。
(step 5) ええい、こうなったらヤケだ!主婦の裏ワザで勝負だ。 スーパーで買ってきたわけぎや三つ葉、通常なら捨ててしまう「根」の部分を土の上においてみた。結果、わずかではあるが収穫に成功! 「これだ!この手があったんだ!」 それからというもの調子に乗って色々なものをおいた。カイワレの根、アルファルファの根、傷んだイチゴ、大根の葉、にんじんの葉...。
(now) 現在ハーブガーデンは、わけのわからない雑草畑と化している。 夫は見るたびに指さして笑う。 「なんだこれ〜(ゲラゲラ)雑草だらけ〜(ゲラゲラゲラ)どこがハーブガーデンだって〜(ゲラゲラゲラゲラ)」 うるさい。それ以上バカにしたら食べさせてやんない!
天文台内には街灯がない。天文台なんだからあたりまえか。官舎わきの裏道に暗めの街頭が数本ある程度だ。(最近、見学者コースの一部にフットライトが設置されました) それにしても、夜はほんとうに足元が真っ暗になる。月の見えない夜などは、家までの道が見えない。いまでこそ前がほとんど見えない真っ暗やみでも家路を歩けるようになったが、友人たちやタクシーの運転手は、 「...こわいですね。」 と口をそろえる。 三鷹の空はだいぶ明るくなってしまったが、それでも遮光領域がある天文台ではそれなりに星が見える。 冬の夜、ベッドに寝ころんで窓を見上げたらオリオン大星雲が見えた。
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天文台官舎マダム日記へつづく
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